「V = IR という公式は知っているけれど、どの値をどこに入れるのか毎回迷う」「電力の公式が3つあって使い分けが分からない」——オームの法則は、「2つの値が分かれば残りは全部出せる」というたった1つの原則で整理できます。
この記事では、電圧・電流・抵抗・電力の4つの値の関係を、代入過程つきの例題で解説します。LEDの抵抗選びという実例や、電力の3つの公式の使い分けも紹介します。数値を1つずつ代入すれば必ず答えにたどり着ける手順を重視しています。
オームの法則の定義: V = I × R
オームの法則は、電圧 = 電流 × 抵抗という関係です。
V = I × R (V は電圧[V]、I は電流[A]、R は抵抗[Ω])
一定温度で抵抗値を一定とみなせる導体では、電圧と電流が比例します。LEDやダイオードなど非線形素子には、単純な比例式をそのまま当てはめられません。
2つの値が分かれば残りの1つは変形で求まります。
| 求めたい値 | 式 | 例 |
|---|---|---|
| 電流 I | I = V ÷ R | 9 V ÷ 300 Ω = 0.03 A |
| 電圧 V | V = I × R | 0.02 A × 220 Ω = 4.4 V |
| 抵抗 R | R = V ÷ I | 12 V ÷ 2.5 A = 4.8 Ω |
最後の例はOpenStaxの教科書にある車のヘッドライトの例です。12 V のバッテリーに 2.5 A 流れるとき、抵抗は 4.8 Ω だと計算できます。
実践1: 電流を求める
9 V の電池に 300 Ω の抵抗をつなぐと、流れる電流は
I = 9 ÷ 300 = 0.03 A(30 mA)
です。mA(ミリアンペア)は A の1/1000なので、0.03 A は 30 mA と読み替えられます。電子工作では mA 表記がよく出てくるため、換算に慣れておくと便利です。
同じく、抵抗の kΩ(キロオーム)は 1000 倍の意味です。4.7 kΩ なら 4700 Ω として計算に入れます。接頭辞の対応(m = 1/1000、k = 1000)を揃えてから式に代入すれば、桁のミスは防げます。
実践2: 電力を求める — 3つの公式
電力 P(単位: W)は「1秒あたりに消費するエネルギー」で、次の3つの式のどれでも計算できます。
| 公式 | 使う場面 |
|---|---|
| P = V × I | 電圧と電流が分かっているとき(常に使える基本形) |
| P = I² × R | 電流と抵抗が分かっているとき |
| P = V² ÷ R | 電圧と抵抗が分かっているとき |
直流で抵抗に12 Vを加え0.5 Aが流れるなら、P=12×0.5=6 Wです。2 Aが流れる10 Ωの抵抗ならP=2²×10=40 W。実際の部品選択には定格電力、温度による許容電力の変化、電源や部品の誤差を確認します。この計算だけで家庭配線の安全性を判定しないでください。
実践3: LEDの抵抗選び(実例)
LEDは、電源電圧からLED自身が落とす電圧(順方向電圧)を引いた残りに、適切な抵抗をつなぐ必要があります。5 V 電源で、順方向電圧 2 V・電流 20 mA の LED を点灯させる場合:
- 抵抗に掛かる電圧は 5 − 2 = 3 V
- 必要な抵抗は R = 3 V ÷ 0.02 A = 150 Ω
このように「引いて、割る」の2ステップで、回路に必要な抵抗値が決められます。電流を 10 mA に抑えたい場合は、R = 3 V ÷ 0.01 A = 300 Ω と、同じ式で明るさを抑える設計もできます。これは仮定した順方向電圧での計算例です。任意の近い値を選ぶのではなく、LEDの定格、順方向電圧のばらつき、電源電圧、抵抗の許容差を確認します。150 Ωに20 mAが流れる場合の消費電力は0.06 Wです。
よくある3つの間違い: ① mA を A に換算し忘れる(20 mA は 0.02 A。1000分の1)。② 電力の公式で V と R を混ぜて √ を付け忘れる(P・R から求める V は √(P × R))。③ オームの法則を交流やモーターにそのまま使う(本記事の式は直流・単純な抵抗負荷が対象。交流では実効値や力率の考慮が必要です)。
ツールで4つの値を一度に確かめる
手計算の答え合わせにはTools Hubのオームの法則計算ツールが使えます。V・I・R・P のうち2つを入力すると、残り2つを自動計算し、使った公式への代入過程を表示します。2つ未満や3つ以上の入力、負の値もわかりやすく通知されます。
使い方(3ステップ)
分かっている2つを入力する
4つの欄(V・I・R・P)のうち、値が分かっている2つに数値を入力します。空欄のままで構いません。
残りの2つを読む
結果カードに4つの値(V・A・Ω・W)が並び、入力していない2つが自動計算されています。
代入過程で確認する
「計算の過程」に使った公式(例: R = V ÷ I)と代入の様子が出るため、手計算のどのステップが違ったかまで確認できます。入力が2つ未満・3つ以上のときや、負の値を入れたときにも、その旨が案内されます。
この記事で紹介したツール
オームの法則計算ツール
2つの値から残り2つを自動計算し、代入過程まで表示。6通りの組合せすべてに対応した、ブラウザで完結する無料ツールです。
記事の例を確かめるには、ツールで V に 9、I に 0.03 を入力します。R が 300、P が 0.27 と表示され、「計算の過程」に R = V ÷ I の代入過程が出ます。回路に複数の抵抗がある場合は、先に合成抵抗計算ツールで R をまとめてからこのツールに流し込むと、回路全体の電流まで計算できます。たとえば 9 V の電池に 100 Ω と 200 Ω を直列につなぐと、合成抵抗は 300 Ω、電流は 0.03 A。この電流を各抵抗に掛けると、100 Ω には 3 V、200 Ω には 6 V が掛かる(合計 9 V)と、電圧の分担まで分かります。
まとめ
ここまでの手順を順番に並べると、「回路図から直列・並列を判別 → 合成抵抗を求める → オームの法則で電流を求める → 電力を確認」という流れになります。各ステップの数値は、対応するツールで1つずつ確認すれば、複雑な回路でもミスを局所化できます。
- オームの法則 V = I × R。2つの値が分かれば、残り1つは割り算か掛け算で出せる
- 電力は P = V × I が基本形。手元の値に応じて P = I²R・P = V²/R を選ぶ
- LEDの抵抗選びは「(電源電圧 − LEDの電圧) ÷ 電流」の2ステップ
- mA は A の1/1000。入力前に単位を揃える
- 本記事の式は直流・単純な抵抗負荷が対象。交流では実効値と力率の考慮が必要
- 抵抗器の消費電力は定格(1/4 W など)以内に収める。P = I²R で発熱を確認
よくある質問
なぜ V = I × R という関係が成り立つのですか?
導体の中では電圧が高いほど電子は流れやすく、抵抗が大きいほど流れにくくなります。多くの金属導体ではこの関係が比例として現れ(オームの法則に従う導体をオーミック導体といいます)、電流 = 電圧 ÷ 抵抗 という形で観測されます。
電力の3つの公式はどれを使えばいいですか?
手元にある2つの値に対応するものを選びます。V と I なら P = VI、I と R なら P = I²R、V と R なら P = V²/R です。どの式も同じ値になるため、入力ミスさえなければ一致します。抵抗器の発熱を考えるときは P = I²R が、電源側から考えるときは P = VI が直接使えます。入れ替えて計算して値がずれたときは、入力値そのものを確認しましょう。
mA(ミリアンペア)とは何ですか?
A(アンペア)の1000分の1です。電子工作の世界では 20 mA のような小さな電流を扱うことが多く、計算に入力するときは 0.02 A に換算します。
交流回路にもオームの法則は使えますか?
基本的な形 V = IR は直流の抵抗負荷向けです。交流では実効値を使う点に加えて、コイルやコンデンサがあると位相のずれ(力率)が関わるため、別途考慮が必要です。
参考資料
- OpenStax, College Physics 2e, Section 20.2 “Ohm’s Law: Resistance and Simple Circuits”(オームの法則 V = IR の定義と例題): openstax.org
- OpenStax, College Physics 2e, Section 20.4 “Electric Power and Energy”(電力の3つの公式): openstax.org
入力の前提
ここでは直流・一定の正の有限抵抗を扱います。2つの値が0の場合など、残りの値を一意に決められない組合せは別途扱う必要があります。