この記事は、高校化学・物理基礎で気体の計算を学んでいる人、大学受験で気体分野を復習したい人、大学初年次で気体の計算をやり直したい人向けです。

「状態方程式とボイル・シャルル、どちらを使えばいいか分からない」「℃のまま代入して答えが合わない」。この2つは、物質量が変わるかと温度をKに直したかを最初に確認すると整理できます。この記事では、式の選び方、単位換算、例題、よくある間違い、無料ツールでの検算までを順に扱います。

結論:式の選び方は「物質量が変わるか」で決まる

場面 使う式 理由
密閉容器で状態1から状態2へ変化し、気体の量が変わらない P₁V₁/T₁ = P₂V₂/T₂ nが一定なのでnRが両辺で共通になる
1つの状態でP・V・n・Tのうち1つを求める PV = nRT 4つのうち3つが分かれば残りが求まる
気体を追加・放出して物質量が変わる 各状態でPV = nRTを立てる nが一定でないため比の式が使えない
温度一定で圧力と体積の関係を求める P₁V₁ = P₂V₂(ボイルの法則) 状態方程式でTを一定にした場合
圧力一定で体積と温度の関係を求める V₁/T₁ = V₂/T₂(シャルルの法則) 状態方程式でPを一定にした場合

「温度一定」「圧力一定」と書かれていても、迷ったら状態方程式に戻れば導けます。逆に、気体を出し入れする問題はボイル・シャルルの法則を使えません。密閉されていない容器では物質量が変わるためです。

代入する前の単位チェック

気体の計算で答えが合わない原因の多くは単位です。代入する前に次の表でそろえます。

量 よくある単位 そろえ方 注意
温度 T ℃ K = t + 273.15(教科書では273のことも) 27℃ = 300.15 K。Kのまま使う
圧力 P atm × 1.01325×10⁵ → Pa 問題では1.013×10⁵ Paで計算してよい
圧力 P mmHg × 133.3 → Pa 760 mmHg = 1 atm
体積 V mL ÷ 1000 → L 物質量を求めるときもLにする
体積 V m³ × 1000 → L 1 m³ = 1000 L
物質量 n g ÷ モル質量 → mol モル質量は化学式に合わせる

気体定数Rは、PをPa、VをLで使うなら 8.31×10³ Pa·L/(K·mol) です。物理で出てくる8.31 J/(mol·K)は、1 J = 1 Pa·m³ = 1000 Pa·Lなので、体積をm³で使う場合の値です。8.31 J/(mol·K)のままVにLを代入すると1000倍ずれます。Rの値はNIST CODATAで8.314462618… J/(mol·K)(定義値)と確認できます。

例題1:標準状態で1 molが22.4 Lになる理由

標準状態(0℃、1.013×10⁵ Pa)でn = 1 molの体積を状態方程式で求めます。

  1. T = 0 + 273.15 = 273.15 K
  2. V = nRT / P
  3. V = 1 × 8.31×10³ × 273.15 ÷ (1.013×10⁵) = 22.4 L

教科書でT = 273 Kとして計算しても22.4 L(22.40 L)です。22.4 L/molは「0℃・1.013×10⁵ Pa」という条件つきの値で、27℃なら1 molは約24.6 Lになります。条件が違う問題で22.4をそのまま使うと答えがずれます。

なお、標準状態の圧力には1 atm(1.013×10⁵ Pa)と1 bar(1.00×10⁵ Pa)の2つの慣習があります。22.4 L/molは1 atm基準の値で、1 bar基準では0℃・1 molは約22.7 Lです(OpenStax 9.2の脚注も参照)。

例題2:状態方程式で圧力を求める

0.50 molの気体が5.0 Lの容器にあり、温度が27℃のときの圧力を求めます。

  1. T = 27 + 273.15 = 300.15 K(教科書の273を使うなら300 K)
  2. P = nRT / V
  3. P = 0.50 × 8.31×10³ × 300.15 ÷ 5.0 = 2.494×10⁵ Pa → 2.49×10⁵ Pa

R = 8.3×10³、T = 300 Kで計算しても2.49×10⁵ Paとなり、有効数字3桁では同じ結果です。検算として、PV/T = 2.49×10⁵ × 5.0 ÷ 300.15 ≈ 4.15×10³と、nR = 0.50 × 8.31×10³ = 4.16×10³がほぼ一致することを確認できます。

例題3:2つの状態を比べる

温度一定ならボイルの法則

1.0×10⁵ Paで2.0 Lの気体を、温度一定のまま4.0×10⁵ Paに圧縮したときの体積V₂を求めます。

P₁V₁ = P₂V₂ より V₂ = P₁V₁ / P₂ = (1.0×10⁵ × 2.0) ÷ (4.0×10⁵) = 0.50 L

圧力が4倍になったので体積は4分の1です。状態方程式で確かめるなら、変化の前後でPVが等しいことを使います。

圧力と温度が変わるならボイル・シャルルの法則

同じ気体を、1.0×10⁵ Pa・27℃から4.0×10⁵ Pa・127℃に変えたときの体積V₂を求めます。

  1. 温度をKに直す:T₁ = 300.15 K、T₂ = 400.15 K
  2. 式を変形する:V₂ = P₁V₁T₂ / (T₁P₂)
  3. 代入する:V₂ = (1.0×10⁵ × 2.0 × 400.15) ÷ (300.15 × 4.0×10⁵) = 0.667 L

温度が上がると体積は増える側に働き、圧力が上がると減る側に働きます。結果の0.667 Lは、圧力4倍で4分の1(0.50 L)になり、温度が約4/3倍(1.33倍)に戻った値です。式を変形してから代入すると、Tを分母と分子のどちらに置くかで迷いません。

例題4:密度と分子量を求める

密度 ρ = PM / (RT)

酸素O₂(モル質量32 g/mol)が1.013×10⁵ Pa、27℃のときの密度を求めます。

ρ = (1.013×10⁵ × 32) ÷ (8.31×10³ × 300.15) = 1.30 g/L

密度の単位g/Lはkg/m³と同じ値です。

分子量 M = ρRT / P

密度1.34 g/L、1.013×10⁵ Pa、0℃の気体のモル質量を求めます。

M = (1.34 × 8.31×10³ × 273.15) ÷ (1.013×10⁵) = 30.0 g/mol

エタンC₂H₆のモル質量は約30 g/molで、値が一致します。密度から分子量を求めるときは、物質量n = m/Mを状態方程式に代入して式を変形します(OpenStax 9.3)。

よくある間違い

  • ℃のまま代入する:27℃を27として計算すると、絶対温度では300.15 Kなので体積が約11倍ずれます。Tは必ずKです
  • mLをLに直し忘れる:P = nRT/VでVにmLを入れると1000倍違う値になります。物質量を求めるときも体積はLです
  • Rと体積の単位を混ぜる:8.31 J/(mol·K)はVをm³で使う値、8.31×10³ Pa·L/(K·mol)はVをLで使う値です
  • 2状態の式でTを逆にする:V₂ = P₁V₁T₂/(T₁P₂)です。温度が上がれば体積は増える、という向きで確認します
  • 物質量が変わるのにボイル・シャルルを使う:気体を追加・放出する問題は、各状態でPV = nRTを立てます
  • 22.4 L/molを条件確認なしに使う:0℃・1.013×10⁵ Pa限定です。27℃なら約24.6 L/molになります

ツールで検算する

手計算の答え合わせには、Tools Hubの気体の状態方程式の計算ツールが使えます。3つのモードはこの記事の例題に対応しています。

1

例題2を確かめる

「計算の種類」で「状態方程式 PV = nRT(1つの状態)」を選び、「求める量」を「圧力 P」にします。体積に5.0(L)、物質量に0.50(mol)、温度に27(℃)を入れ、「計算する」を押すと、2.49×10⁵ Paと、T = 27.0℃ = 300 Kへの換算と代入の途中式が表示されます。

2

例題3を確かめる

「ボイル・シャルルの法則(2つの状態)」に切り替え、求める量を「体積 V₂」にします。P₁に1.0×10⁵(Pa)、V₁に2.0(L)、T₁に27(℃)、P₂に4.0×10⁵(Pa)、T₂に127(℃)を入れると、0.667 Lと式変形の過程を確認できます。「例題で試す」の「ボイルの法則 2.0 L → 0.50 L」を使うと、温度一定の例題もすぐに試せます。

3

密度・分子量を確かめる

「密度・分子量 ρ = PM/(RT)」では、求める量に「分子量 M(g/mol)」を選び、密度に1.34(g/L)、圧力に1.013×10⁵(Pa)、温度に0(℃)を入れると30.0 g/molが表示されます。気体定数Rは8.31×10³と8.3×10³を切り替えられます。表示は有効数字3桁の目安なので、レポートでは問題で与えられた桁数に丸め直してください。

この記事で紹介したツール

気体の状態方程式の計算

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適用条件と限界

  • この記事の計算は理想気体を前提としています。理想気体は分子の体積と分子間力を無視できる仮想の気体で、実際の気体は低圧・高温ほどよく従います
  • 高圧・低温では実在気体のずれが大きくなります。たとえば高圧に圧縮した気体はPV = nRTの予想より体積が小さくなることがあり、補正にはファンデルワールスの式などを使います(OpenStax 9.6)
  • 温度換算は273.15を使うか273を使うかで約0.05%の差があります。有効数字3桁では通常同じ結果になりますが、桁数を多く扱うときは273.15を使います(NIST)
  • 混合気体では、全物質量についてPV = nRTが成り立ち、各成分の分圧はドルトンの法則で足し合わせます。分圧の計算はこの記事では扱っていません
  • 気体の質量から物質量に直すときは、その化学式に合うモル質量が必要です。混合物では平均モル質量を使います

よくある質問

ボイルの法則とシャルルの法則の違いは?

ボイルの法則は温度一定でPV = 一定、シャルルの法則は圧力一定でV/T = 一定です。どちらも状態方程式PV = nRTで、片方を一定にした特別な場合です。2つをまとめたP₁V₁/T₁ = P₂V₂/T₂を覚えておけば、温度一定・圧力一定のどちらも同じ式から導けます。

℃をそのまま代入すると、どのくらいずれますか?

絶対温度に比例する量がずれるため、27℃を27として計算すると絶対温度300.15 Kの約11分の1になります。体積を求める問題なら約11倍の値になり、明らかに不自然な答えになります。計算前に必ずKへ直してください。

気体定数Rは8.3×10³と8.31×10³のどちらを使えばよいですか?

どちらも教科書で使われる値で、有効数字2〜3桁の問題では結果はほぼ同じです。問題文に指定があればその値を使い、指定がなければ8.31×10³ Pa·L/(K·mol)を使えば十分です。実際の値は約8.314×10³です。

22.4 Lはどんなときに使えますか?

0℃(273.15 K)、1.013×10⁵ Paの標準状態で、気体1 molが占める体積として使えます。温度や圧力が違う条件では使えません。たとえば27℃では1 molあたり約24.6 Lになります。モル体積は状態方程式から毎回計算する習慣をつけると安全です。

実在気体でもこの式は使えますか?

低圧・高温の条件ではよい近似になります。高校・大学初年次の問題は理想気体として扱うものがほとんどですが、高圧のボンベや低温の液化付近ではずれが大きくなります。その場合は実在気体の補正が必要です。

この記事の確認範囲

2026年10月4日に参考資料と定義・適用条件を照合し、例題の数値を手計算で再確認しました(22.4 L、2.49×10⁵ Pa、0.50 L、0.667 L、1.30 g/L、30.0 g/mol)。例題は学習用の計算例で、実際に測定した実験結果ではありません。ツールの入力項目と表示される途中式も確認対象としています。