この記事は、中学理科の水溶液の単元を学んでいる人、高校化学基礎・化学で濃度計算をやり直したい人、実験や調理で溶液を調整する人向けです。
「分母は水の量? 食塩水全体?」「水100gに食塩20gを溶かしたら20%でいいの?」「質量パーセント濃度とモル濃度の変換ができない」。質量パーセント濃度のつまずきは、分母が何かとどの量が分かっているかの2点に整理できます。この記事では、定義から溶液の調製、混合・蒸発、モル濃度への変換、無料ツールでの検算までを例題つきで扱います。
結論:式は1つ、分母は「溶液全体」
質量パーセント濃度は、溶液全体の質量のうち溶質が何%を占めるかを表します。
| 用語 | 意味 | 食塩水の例 |
|---|---|---|
| 溶質 | 溶けている物質 | 食塩 |
| 溶媒 | 溶かしている液体 | 水 |
| 溶液 | 溶質+溶媒(できあがった液全体) | 食塩水 |
| 質量パーセント濃度 | 溶質の質量 ÷ 溶液の質量 × 100 | 10%など |
質量パーセント濃度(%) = 溶質の質量(g) ÷ 溶液の質量(g) × 100
分母は水(溶媒)ではありません。水90gに食塩10gを溶かした食塩水は、溶液が100gなので 10 ÷ 100 × 100 = 10% です。10 ÷ 90 × 100 = 11.1% とするのが典型的な間違いです(OpenStaxの定義)。
例題1:水100gに食塩20gを溶かすと何%?
- 溶液の質量 = 水100g + 食塩20g = 120g
- 濃度 = 20 ÷ 120 × 100 ≈ 16.7%
「水100g」という数字だけを見て20%としてしまうのが最も多い誤りです。溶液の質量は必ず「溶質+溶媒」で計算します。なお、実際に溶けきる量には上限(溶解度)があり、食塩は20℃の水100gに約36gまで溶けますが、物質によって上限は大きく異なります。上限を超えて加えた分は溶けずに残ります(溶解度と飽和)。
例題2:8%の食塩水200gを作る
目標の濃度と溶液の質量が決まっているときは、必要な溶質と水の質量を逆算します。
- 溶質 = 溶液 × 濃度 ÷ 100 = 200 × 8 ÷ 100 = 16g
- 溶媒(水)= 溶液 − 溶質 = 200 − 16 = 184g
できあがりの質量が200gになるように、食塩16gを水184gに溶かします。「水200gに食塩を16g加える」と溶液は216gになり、濃度が約7.4%にずれる点に注意してください。調製では溶液の質量を基準にします。
例題3:混合と蒸発
2つの溶液を混ぜる
10%の食塩水100gと5%の食塩水200gを混ぜるとします。溶質の合計は変わりません。
- 溶質A = 100 × 10 ÷ 100 = 10g、溶質B = 200 × 5 ÷ 100 = 10g
- 溶液 = 100 + 200 = 300g、溶質 = 20g
- 濃度 = 20 ÷ 300 × 100 ≈ 6.67%
10%と5%の単純な平均である7.5%にはなりません。質量が大きい5%側に引っ張られるためです。質量が同じ場合だけ単純な平均になります。
水を蒸発させる
8%の食塩水200gから水50gを蒸発させると、溶質は蒸発しないので16gのまま、溶液だけが150gになります。
- 溶質 = 200 × 8 ÷ 100 = 16g(変わらない)
- 溶液 = 200 − 50 = 150g
- 濃度 = 16 ÷ 150 × 100 ≈ 10.7%
ただし、溶質が溶けきれなくなると(飽和)、それ以上は濃くならず結晶が析出します。蒸発の計算が使えるのは飽和に達するまでです。
例題4:質量パーセント濃度とモル濃度の変換
質量パーセント濃度は質量基準、モル濃度は体積基準(mol/L)なので、変換には溶液の密度と溶質のモル質量が必要です。溶液1L(1000mL)を基準に考えると、次の関係になります。
| 変換 | 式 | 変数の意味 |
|---|---|---|
| 質量% → モル濃度 | c = 10wρ / M | w: 質量%(%)、ρ: 密度(g/mL)、M: モル質量(g/mol) |
| モル濃度 → 質量% | w = cM / (10ρ) | c: モル濃度(mol/L) |
- 5%の塩化ナトリウム水溶液(密度1.033 g/mL、M = 58.44 g/mol):c = 10 × 5 × 1.033 ÷ 58.44 ≈ 0.884 mol/L
- 98%の濃硫酸(密度1.8 g/mL、M = 98 g/mol):c = 10 × 98 × 1.8 ÷ 98 = 18 mol/L
- 12 mol/Lの濃塩酸(密度1.20 g/mL、M = 36.5 g/mol):w = 12 × 36.5 ÷ (10 × 1.20) = 36.5%
密度は温度や濃度で変わるため、正確に求めたいときは実測値を使ってください。希釈の計算(C₁V₁ = C₂V₂)はモル濃度と希釈の計算方法で確認できます。
よくある間違い
- 分母を水の質量にする:水90g+食塩10gを10÷90×100=11.1%とする。正しくは10÷100×100=10%
- 「水200gに食塩16g」で8%を作ろうとする:溶液は216gになり約7.4%。目標は溶液200g
- 混合濃度を単純平均する:質量が違えば濃度も単純平均にはならない
- 体積%と混同する:質量パーセントは質量基準(w/w)。体積パーセント(v/v)やw/v%とは別物
- 密度を無視してモル濃度に変換する:質量%からmol/Lへの変換には密度が必要
- 溶解度を超えた量を想定する:溶けない分は析出し、計算どおりの濃度にならない
ツールで検算する
手計算の答え合わせには、Tools Hubの質量パーセント濃度の計算ツールが使えます。3つのモードがこの記事の例題に対応しています。
例題1・2を確かめる
「計算の種類」が「基本(溶質・溶媒・溶液)」の状態で「例題で試す」の「水90g+食塩10g」を押すと、濃度10%、溶液100g、溶質10g、溶媒90gが表示されます。「分かっている値」を「溶液の質量と目標濃度」に切り替え、「8%の食塩水200gを作る」を押すと、溶質16g・溶媒184gが求められます。
例題3(混合・蒸発)を確かめる
「計算の種類」を「混合・水の追加・蒸発」にして「10%100g+5%200g」を押すと、混合後の濃度6.667%が表示されます。「8%を水50g蒸発」では、水の増減を−50として10.67%を確認できます。水の増減は「+で追加・−で蒸発」です。
例題4(モル濃度変換)を確かめる
「計算の種類」を「質量パーセント ⇔ モル濃度」にして「5% NaCl → モル濃度」を押すと、密度1.033 g/mL・モル質量58.44 g/molから0.8838 mol/Lが得られます。「12 mol/L HCl → 質量%」では36.5%になります。変換の向きは選択欄で切り替えられます。
この記事で紹介したツール
質量パーセント濃度の計算
濃度の基本計算、溶液の調製、混合・蒸発、モル濃度への変換を途中式つきで計算。無料・登録不要・ブラウザ内で完結します。
適用条件と限界
- 質量パーセント濃度は**質量基準(w/w)**です。体積パーセント(v/v)や質量体積パーセント(w/v)とは定義が異なります
- 質量で考えるため、温度で体積が変わっても質量パーセント濃度の値は変わりません(体積基準のモル濃度は変わります)
- 溶質が溶けきれない場合は、溶解度を超えた分が析出し、計算どおりの濃度にはなりません。飽和溶液では温度による溶解度の変化も考えます
- 溶質が反応する混合や、水和物(CuSO₄・5H₂Oなど)を使う場合は、組成を確認して溶質の質量を数え直す必要があります
- モル濃度への変換に使う密度は、温度・濃度で変わります。正確に求める場合は実測値を確認してください
よくある質問
質量パーセント濃度の分母は何ですか?
溶液全体の質量(溶質+溶媒)です。水90gに食塩10gを溶かした食塩水なら分母は100gで、濃度は10%です。水の質量を使うと11.1%になり誤りです。
水100gに食塩20gを溶かすと何%ですか?
20 ÷ (100+20) × 100 ≈ **16.7%**です。20%ではありません。加えた食塩がすべて溶けるかどうかは、物質と温度による溶解度で決まります。
8%の食塩水を200g作るには何g量ればよいですか?
食塩16gと水184gです。溶質 = 溶液 × 濃度 ÷ 100、水 = 溶液 − 溶質で求めます。「水200gに食塩16g」では溶液が216gになるため、目標の8%にはなりません。
質量パーセント濃度とモル濃度はどう使い分けますか?
濃度を質量の割合で表す質量パーセントは、調製や製品表示、中学校理科でよく使われます。化学反応の量的計算では、体積あたりの物質量を表すモル濃度(mol/L)を使うのが便利です。互いに変換するには密度とモル質量が必要です。
混合した濃度は単純な平均ですか?
質量が同じ場合だけ単純な平均になります。一般には「溶質の合計 ÷ 溶液の合計 × 100」で、質量の大きい溶液の濃度に近づきます。
水を蒸発させれば濃度はどこまでも上がりますか?
いいえ。溶質は蒸発しませんが、溶けきれなくなると飽和に達し、それ以上は濃くならず結晶が析出します。溶質の溶解度と温度条件を確認してください。
この記事の確認範囲
2026年10月6日に、定義と式を参考資料と照合し、例題の数値を手計算で再確認しました(水90g+食塩10g→10%、水100g+食塩20g→約16.7%、8%食塩水200g→食塩16g・水184g、10%100g+5%200g→約6.67%、8%200gから水50g蒸発→約10.7%、5% NaCl→0.8838 mol/L、98% H₂SO₄→18 mol/L、12 mol/L HCl→36.5%)。例題は学習用の計算例で、実際の測定結果ではありません。ツールの入力項目と表示も確認対象としています。