この記事は、高校化学・物理で半減期の計算問題を解く人、放射性物質の残量や炭素年代測定の数値を読み解きたい人、指数と対数の計算を整理したい大学初年次の人向けです。

「半減期が3回分過ぎると、残りは何%?」「残量から経過時間を求めるのに、なぜ対数(log)が出てくるの?」「e を使う式と 2 を使う式、どちらが正しい?」

半減期の式は1行で書けますが、つまずきの多くは経過時間が半減期の何倍かを先に求めず、指数・単位・対数の扱いを混ぜてしまうことにあります。この記事では、残量・経過時間・半減期の3つの求め方を例題つきで整理し、よくある誤りと検算方法を示します。


結論:半減期の公式と3つの求め方

N = N₀ × (1/2)^(t/T)

  • N₀:初期量(質量・原子数・放射能など。単位は自由に選べます)
  • N:時刻 t に残っている量(N₀ と同じ単位)
  • T:半減期(t と同じ時間の単位)
  • t:経過時間

計算では、まず t/T(経過した半減期の数) を求めると確実です。t/T が 2 なら、残りは (1/2)² = 1/4 です。

求めたい量 式
残量 N N = N₀ × (1/2)^(t/T)
経過時間 t t = T × log₂(N₀/N)
半減期 T T = t × ln2 ÷ ln(N₀/N)

例(N₀ = 100、T = 10日)では、30日後の残量は 12.5 です。残量が 20 になるのは約 23.2日後で、20日後に 25 になる試料の半減期は 10日です。

判断のめやす:残量が初期量の 1/2ⁿ になっていれば、経過した半減期の数は n 回です。残りが 1/8 なら 3 回です。


1. 半減期の意味:一定時間ごとに「半分」になる理由

半減期は、物質の量が半分になるまでに要する時間です。JAEAの用語解説では、物質の量が指数関数に従って減少する場合、半減期は最初の量の大小にかかわらず一定になると説明されています。放射性物質では、個々の原子核が一定時間内に壊変する確率がすべて等しいため、量が指数関数的に減ります(JAEA ATOMICA「半減期」)。

教科書では、崩壊定数 λ を使って次のように書きます(OpenStax Chemistry 2e)。

λ = ln2 ÷ T ≈ 0.693 ÷ T
N = N₀ × e^(−λt)

λ を代入すると、e^(−λt) = e^(−(ln2)·t/T) = (e^(ln2))^(−t/T) = 2^(−t/T) = (1/2)^(t/T) となり、冒頭の式と一致します。e を使う式と 2 を使う式は、同じ現象を別の書き方で表しています。

初期量100の残存割合の曲線。経過した半減期の数が0、1、2、3、4、5のとき、残存割合は100%、50%、25%、12.5%、6.25%、3.125%になる。
図1:経過した半減期の数 t/T が1増えるごとに、残存割合は半分になります。Tools Hub作成。
t/T 残存割合 残量(N₀ = 100)
0 1(100%) 100
1 1/2(50%) 50
2 1/4(25%) 25
3 1/8(12.5%) 12.5
4 1/16(6.25%) 6.25
5 1/32(3.125%) 3.125

2. 残量を求める:N = N₀ × (1/2)^(t/T)

手順は3つです。(1) t/T を計算する、(2) (1/2) を t/T 乗する、(3) N₀ に掛ける。

例題1(半減期の整数倍):初期量 100 g、半減期 10 日、経過時間 30 日の場合です。

  • t/T = 30 ÷ 10 = 3
  • N = 100 × (1/2)³ = 100 × 0.125 = 12.5 g

例題2(半減期の途中):経過時間が 25 日の場合です。

  • t/T = 25 ÷ 10 = 2.5
  • N = 100 × (1/2)^2.5 = 100 × 1/4 × 1/√2 ≈ 17.68 g

2.5 回分の減少は、「2 回で 1/4 になった後、さらに半減期の半分の時間で 1/√2 ≈ 0.707 倍になる」と考えると確かめやすくなります。

例題3(炭素14):半減期は 5,730 年です(NOAA GML)。

  • 11,460 年後(t/T = 2):残存割合 25%
  • 17,190 年後(t/T = 3):残存割合 12.5%

例題4(コバルト60):半減期は 5.27 年です。15 年後の残存割合は、t/T = 15 ÷ 5.27 ≈ 2.846 から (1/2)^2.846 ≈ 0.139、つまり 13.9% です。教科書(OpenStax)は λ を 0.132/年 に丸めてから計算しているため、13.8% と書かれています。丸めの違いが最後の桁に出る例です。


3. 経過時間を求める:log₂ を使う

N/N₀ = (1/2)^(t/T) の両辺で、2 を底とする対数をとると次の式になります。

t = T × log₂(N₀/N)

log₂ を持たない電卓では、次の換算を使います。

log₂x = log₁₀x ÷ log₁₀2 = ln x ÷ ln 2(log₁₀2 ≈ 0.30103、ln 2 ≈ 0.69315)

例題5:初期量 100、残量 20、半減期 10 日の場合です。

  • log₂(100 ÷ 20) = log₂5 ≈ 2.3219
  • t = 10 × 2.3219 ≈ 23.2 日
  • 検算:100 × (1/2)^2.32 ≈ 20.03(ほぼ 20)

対数の基本は対数の計算方法、(1/2) のべき乗はべき乗の計算方法で確認できます。


4. 半減期を求める:測定値からの逆算

測定した初期量・残量・経過時間から、半減期 T を求められます。

T = t × ln2 ÷ ln(N₀/N)

例題6:初期量 100 の試料が、20 日後に 30 になりました。

  • ln(100 ÷ 30) = ln 3.333 ≈ 1.2040
  • T = 20 × 0.6931 ÷ 1.2040 ≈ 11.5 日

実験では、時刻を変えた複数の測定値を使うのが一般的です。ln N を時間 t に対してグラフにすると直線になり、その傾きは −λ(= −ln2 ÷ T)です。傾きから T を求めると、1 回の測定の誤差を抑えられます。


5. ツールで検算する手順

1

例題3(炭素14)を確かめる

「例題で試す」の「C-14 2回分」を押すと、初期量 100、半減期 5730、経過時間 11460 が入ります。残存量は 25、残存割合は 25% と表示されます。

2

半減期の途中の値を確かめる

「半減期0.5回分」を押すと、初期量 100、半減期 10、経過時間 5 が入り、残存量は約 70.71 と表示されます。例題2の経過時間 25 を入力すると、約 17.68 になります。

3

逆算の結果を入力し直す

第3節で求めた 23.2 日を経過時間に、半減期に 10 を入力すると、残存量は約 20 になります。計算過程の「経過した半減期 t/T」と「崩壊定数 λ = ln2 ÷ T」も確認してください。

注意:このツールは残存量を求めるツールです。経過時間や半減期は直接求めないため、第3節・第4節の式で求めたあと、ツールに入力し直して検算してください。


6. よくある失敗と対処法

失敗1:e^(−t/T) で計算してしまう

t = T のとき e^(−1) ≈ 0.368 となり、半分(0.5)になりません。e を使うなら、指数は −λt(λ = ln2 ÷ T)です。指数を t/T のままにすると誤りになります。

失敗2:平均寿命と半減期を混同する

平均寿命 τ は 1/λ で、τ = T ÷ ln2 ≈ 1.443 T です。T = 10 日なら τ ≈ 14.4 日です。半減期は量が半分になる時間、平均寿命は量が約 36.8%(1/e)になる時間で、意味が異なります。

失敗3:単位をそろえない

半減期を年、経過時間を日で入力すると、比が大きく狂います。たとえば T = 5,730 年に対して 11,460 日(約 31.4 年)と入れると、残存割合は約 99.6% になり、ほとんど減っていないように見えます。T と t は必ず同じ単位に換算してください。

失敗4:「残り 1%」の回数を切り捨てる

残量が 1% になる半減期の数は log₂100 ≈ 6.64 です。6 回では 1.56%、7 回で 0.78% になります。「6 回で 1%」は誤りです。

失敗5:途中の値を丸めすぎる

コバルト60の例では、λ を 0.132 に丸めたため 13.8% になりました。丸めずに計算すると 13.9% です。計算は途中で丸めず、最後に有効数字の桁数で整えます(有効数字の桁数の数え方)。


7. 適用条件と限界

  • この式は、1 種類の放射性核種が一次の崩壊に従って減る場合に使います。
  • 崩壊でできた娘核種もさらに放射性で、その量も知りたい場合は、崩壊系列の式が必要です。
  • 原子核の数が少ないと、個々の崩壊は確率的に起こります。この式は、多数の原子核の平均的な振る舞いを表すものと考えてください。
  • 核崩壊の速さは、温度や化学的な形態によって変わらないとされています(UC Davis Chem 2C, LibreTexts)。容器からの漏れや化学反応による減少は、この式とは別の現象です。
  • 炭素14の半減期には、真の値として 5,730 年、年代測定で慣例的に使われる値として 5,568 年(リビーの値)があります。年代測定の報告値は 5,568 年を前提にしているため、年代を計算する前に出典の前提を確認してください(University of Oxford)。
  • 教科書は、炭素14による年代測定は約 10 半減期(約 57,000 年)が上限の目安としています(OpenStax)。

よくある質問

半減期が過ぎると、放射性物質はなくなりますか?

なくなりません。半減期が 1 回過ぎると量は半分になりますが、理論上は何回半減しても 0 にはなりません。実務では「検出できないほど少ない」などの基準で扱います。

半減期は温度や圧力で変わりますか?

核崩壊の速さ(半減期)は、温度や化学的な形態によって変わらないとされています。ただし、材料の中での拡散、気体としての漏れ、化学反応による減少などは、核崩壊とは別の現象です。

電卓に log₂ がないときは、どう計算しますか?

log₂x = log₁₀x ÷ log₁₀2、または ln x ÷ ln 2 を使います。対数計算ツールでは、底に 2 を選んで直接計算できます。

e を使う式と 2 を使う式は、どちらで計算すればよいですか?

どちらを使っても同じ結果になります。N = N₀ × e^(−λt) と λ = ln2 ÷ T を組み合わせると、N = N₀ × (1/2)^(t/T) になります。経過時間を半減期の回数で数えたいときは、(1/2)^(t/T) の形が分かりやすいです。


まとめ

  • 残量は N = N₀ × (1/2)^(t/T) で求めます
  • 経過時間は t = T × log₂(N₀/N) で求めます
  • 半減期は T = t × ln2 ÷ ln(N₀/N) で求めます
  • 最初に t/T を求めると、半減期が何回分過ぎたかが分かります
  • 単位をそろえ、丸めは最後に行います

この記事で紹介したツール

半減期計算

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