「pH 2.70 みたいな数字は、いったいどこから出てくるの?」——pHの計算は、「−log₁₀ を取る」たった1つの操作と、その逆算を覚えるだけで解けるようになります。対数と聞くと身構えますが、使うのは電卓の log ボタン1つです。
この記事では、水素イオン濃度 [H⁺](mol/L)から pH を求める手順、pH から濃度を逆算する手順を、代入過程つきの例題で解説します。「pH が1違うと10倍」という直感の正体や、酸性・中性・塩基性の目安もあわせて押さえます。
pHの定義: 濃度の対数をマイナスに
pH は、水素イオン濃度 [H⁺](単位は mol/L)の常用対数にマイナスを掛けた値です。
pH = −log₁₀[H⁺]
水素イオン濃度は 10⁻³ のように10のべきで表されることが多いため、対数を取ると「10の何乗か」がそのまま読み取れます。マイナスを付けるのは、濃度が小さいほど数値が大きくなるようにするためです(酸性が強いほど pH が小さくなる)。
なお、厳密には水素イオンは水分子と結びついたオキソニウムイオン(H₃O⁺)として存在するため、教科書によっては pH = −log[H₃O⁺] と表記されます。本記事では見やすさのため [H⁺] で統一しますが、値は同じです。
実践1: 濃度から pH を求める
例題1: [H⁺] = 1.0 × 10⁻³ mol/L の場合
10⁻³ なので「3」が pH だとすぐ分かります。
pH = −log₁₀(1.0 × 10⁻³) = −(−3) = 3
例題2: [H⁺] = 2.0 × 10⁻³ mol/L の場合
べきがきれいに揃わない場合は、対数の性質 log(2 × 10⁻³) = log 2.0 + log 10⁻³ を使って分解します。
pH = −log₁₀(2.0 × 10⁻³) = −(log 2.0 − 3) = 3 − log 2.0
log 2.0 ≈ 0.30 なので、pH = 3 − 0.30 = 2.70。電卓なら log 2.0 × 10⁻³ をそのまま log ボタンに入れて、符号を逆にするだけです。log 2 ≈ 0.30、log 3 ≈ 0.48、log 5 ≈ 0.70 の3つを覚えておくと、2・3・5の倍数でできる多くの濃度(4, 5, 6, 8, 9 など)の pH が電卓なしで概算できます。
例題3: [H⁺] = 1.0 × 10⁻⁷ mol/L の場合
純水の値です。pH = −(−7) = 7 となり、中性になります。
実践2: pH から濃度を逆算する
逆は [H⁺] = 10⁻ᵖᴴ です。pH が分かっていれば、10のべきに戻すだけです。
- pH = 5 のとき: [H⁺] = 10⁻⁵ = 1.0 × 10⁻⁵ mol/L
- pH = 2.5 のとき: [H⁺] = 10⁻²·⁵ = 10⁰·⁵ × 10⁻³ ≈ 3.16 × 10⁻³ mol/L(10⁰·⁵ = √10 ≈ 3.16)
実験レポートでは「測定した pH から濃度を記載する」場面で、この逆算を使います。
pHの目安: 酸性・中性・塩基性
pH の値は、25°Cの水を基準にした場合、次のように分類されます。
| pHの範囲 | 分類 | 身近な例(目安) |
|---|---|---|
| pH < 7 | 酸性 | レモン汁、お酢、胃酸 |
| pH = 7 | 中性 | 純水 |
| pH > 7 | 塩基性 | 石鹸水、重曹水 |
水温が変わると中性点はずれます(80°Cでは約6.3)。また、濃厚な酸や塩基では pH が 0 未満・14 超になることもあり、「0〜14に収まる」と決めつけるのは誤りです。
「pHが1違うと10倍」の正体
pH が対数であるいちばん大切な帰結が、pH が1違うと水素イオン濃度が10倍変わるという関係です。
- pH 3 の溶液と pH 4 の溶液では、pH 3 のほうが水素イオン濃度が10倍(1桁)高い
- pH 3 と pH 6 なら 10 × 10 × 10 = 1000倍
具体的に並べると、pH 1 は 0.1 mol/L、pH 2 は 0.01 mol/L、pH 3 は 0.001 mol/L です。pH が1つ下がるたびに小数点が1桁動く——この対応を頭に入れておくと、「pH 3 の溶液」と聞いただけでおおよその濃度が浮かびます。
なお、水酸化イオン濃度 [OH⁻] に対して同じ操作をした値を pOH といい、25°Cでは pH + pOH = 14 という関係になります。pH 2.70 の溶液なら pOH = 14 − 2.70 = 11.30 です。「pH から水酸化イオン濃度を知りたい」ときは、この式で pOH に直してから 10⁻ᵖᴼᴴ を計算します。
よくある3つの間違い: ① 対数を取ったあとにマイナスを付け忘れる(pH が −3 になる)。②「pH が1違う=濃度も少し違う」と思う(実際は10倍の差)。③ [H⁺] に 0 や負の数を入れる(対数が定義できず、pH は存在しません)。⑷ pH = 7 だけが中性と決めつける(温度で中性点はずれます)。
ツールでpHと濃度を確かめる
手計算の答え合わせにはTools HubのpH計算ツールが使えます。「濃度 → pH」と「pH → 濃度」の両方向に対応し、pH = −log₁₀[H⁺] の代入過程、酸性・中性・塩基性の判定(25°C基準)まで表示します。濃度は 1e-7 のような指数表記で入力できます。
使い方(3ステップ)
計算の向きを選ぶ
「濃度 → pH」か「pH → 濃度」のタブを選びます。ラベルが向きに合わせて切り替わります。
値を入力する
濃度なら 1e-7、pH なら 2.5 のように入力します。「中性(純水)」の例題ボタンもあります。
結果と判定を読む
計算結果に加えて、「計算の過程」に代入の様子、酸性・中性・塩基性の判定が表示されます。
この記事で紹介したツール
pH計算ツール
濃度⇄pHを両方向で計算し、代入過程と酸性・中性・塩基性の判定を表示。1e-7のような指数表記にも対応した無料ツールです。
記事の例を確かめるには、ツールで「濃度 → pH」タブを選び「1e-7」と入力します。pH = 7 と「中性」の判定が出ます。「pH → 濃度」タブで「2.5」と入力すれば 3.16 × 10⁻³ mol/L が得られます。pH の元になる対数の計算方法そのものは「対数の計算方法」の記事で詳しく解説しています。溶液の濃度そのものを扱う場面では、モル・モル濃度ツールや希釈計算ツールもあわせてご利用ください。
まとめ
- pH = −log₁₀[H⁺]。濃度が10のべきなら、べき数がそのまま pH になる
- 逆算は [H⁺] = 10⁻ᵖᴴ。pH 2.5 → 3.16 × 10⁻³ mol/L のように10のべきに戻す
- pH が1違うと濃度は10倍。感覚の差ではなく桁の差で読む
- 酸性 < 7 = 中性 < 7 の分類は25°C基準。温度で中性点はずれ、0〜14を外れる値も存在する
- pOH は pH と対になる値で、25°Cでは pH + pOH = 14 の関係が成り立つ
- 答え合わせは、代入過程と判定を表示してくれるツールで
よくある質問
なぜ pH は対数(−log₁₀)を使うのですか?
水素イオン濃度は溶液によって10⁻¹から10⁻¹⁴程度まで、桁で変わるためです。対数を取れば広い範囲が0〜14程度の見やすい数値に収まり、「1違えば10倍」という比較も簡単になります。
pH 7 が中性なのはなぜですか?
25°Cの純水では水素イオン濃度が 1.0 × 10⁻⁷ mol/L で、これが pH 7 になるためです。純水中では水素イオンと水酸化イオンの濃度が等しく、酸でも塩基でもない状態に対応します。
pH が 0 未満や 14 以上になることはありますか?
あります。濃厚な塩酸(約12 mol/L)では pH がマイナスになり、濃厚な水酸化ナトリウム水溶液では 14 を超えます。「0〜14」はあくまで一般的な水溶液の目安です。
pOH とは何ですか?
水酸化イオン濃度 [OH⁻] に対する −log₁₀[OH⁻] です。25°Cでは pH + pOH = 14 が成り立つため、pH が分かれば pOH も分かります。酸性溶液ほど pH が小さく pOH が大きくなります。
参考資料
- OpenStax, Chemistry 2e, Section 14.2 “pH and pOH”(pHの定義、逆算、酸性・中性・塩基性の分類と温度依存): openstax.org