「再結晶の計算で、どの質量を比例式に入れるのか分からなくなる」「冷却後に溶ける量と析出量を混同してしまう」——再結晶の析出量は、次の3つを順に求めるだけで解けます。
- 高温で溶けている溶質の量
- 冷却後に水に溶けていられる量
- その差(=出てくる結晶の量)
この記事では、水100gあたりの溶解度を使った比例計算の手順を、硝酸カリウムの例題と手計算で確認し、蒸発が加わる場合・よくある間違い・無料ツールでの検算までをまとめます。
溶解度と飽和溶液の基本
溶解度とは、一定の温度で水100gに溶ける物質の最大量(g)です。上限まで溶けた溶液を飽和溶液といい、質量の比は次のようになります。
- 溶質:S g
- 水:100 g
- 飽和溶液:100 + S g
たとえば溶解度が32なら、水100gに溶質32g、飽和溶液は132gです。用語も確認しておきましょう。溶けている物質が溶質、溶かしている液体(水)が溶媒、両者を合わせた全体が溶液です。「溶液の質量 = 溶質の質量 + 水の質量」という関係があります。
最初に「溶解度の基準」を確認:問題文やグラフの溶解度が「水100gあたり」なのか「溶液100gあたり」なのかで式が変わります。この記事と紹介するツールは「水100gあたり」を前提にしています。
冷却で析出する量を求める(基本の4ステップ)
硝酸カリウムの溶解度を、60℃で109、20℃で32(いずれも水100gあたり)とします。60℃の飽和溶液200gを20℃まで冷却したとき、析出する結晶は何gかを考えます。
- 高温で溶けている溶質を求める:飽和溶液200gのうち、溶質は溶解度の比から求めます。 200 × 109 ÷ (100 + 109) = 200 × 109 ÷ 209 = 104.306… g
- 水の量を確認する:冷却しても水は蒸発しないので、水の量は変わりません。 水 = 200 − 104.306… = 95.694… g
- 冷却後に溶けていられる量を求める:20℃の溶解度32を、水95.694… g に比例で当てはめます。 32 × 95.694… ÷ 100 = 30.622… g
- 差を取る:高温で溶けていた量から、冷却後に溶ける量を引きます。 104.306… − 30.622… = 73.684… g
答えは約73.7 gです。検算として、残った溶液の「溶質 ÷ 水」を計算すると 30.622 ÷ 95.694 = 0.32 となり、20℃の溶解度の比 32 ÷ 100 と一致します。
一発で出す比例式:飽和溶液の質量M gからは、析出量 = M × (S₁ − S₂) ÷ (100 + S₁) でも求められます。例なら 200 × (109 − 32) ÷ 209 = 73.684… g です。上の4ステップと同じ計算をまとめただけで、意味は「飽和溶液 (100 + S₁) g あたり (S₁ − S₂) g が出る」という比例です。
水の量が分かっている場合
問題文で飽和溶液の質量ではなく水の量が与えられている場合は、水の量を基準にします。水W gに溶ける最大量は S × W ÷ 100 で求められるので、析出量は次の式になります。
析出量 = (S₁ − S₂) × W ÷ 100
例:溶解度が60℃で110、20℃で32の物質について、60℃の水200gに溶かせるだけ溶かした溶液を20℃に冷却すると、
(110 − 32) × 200 ÷ 100 = 78 × 2 = 156 g
が析出します。飽和溶液の質量しか分からない場合も、比「水100g:飽和溶液(100 + S₁) g」から水の量を先に求めてから、同じ式を使えます。
水を蒸発させた場合
水を蒸発させると、水だけが減って溶質は残るため、蒸発した分も析出に加わります。蒸発後の水の量で低温の溶解度を当てはめて計算します。
例:溶解度が40℃で64、20℃で32の物質について、40℃の水200gに溶かせるだけ溶かした溶液から水100gを蒸発させ、20℃まで冷却すると、
- 40℃で溶けている溶質:64 × 200 ÷ 100 = 128 g
- 蒸発後の水:200 − 100 = 100 g
- 20℃で溶けていられる量:32 × 100 ÷ 100 = 32 g
- 析出量:128 − 32 = 96 g
温度を変えずに蒸発だけを行う場合は、高温と低温の溶解度に同じ値を入れると、蒸発による析出量を求められます。
よくある間違い
- 分母に水の量を使ってしまう:飽和溶液の質量から溶質を求めるときの分母は (100 + S₁) です。水100gあたりの溶解度をそのまま溶液の質量に掛けると、値がずれます。
- 冷却後に溶ける量を析出量と答える:30.622 g は「まだ溶けている量」で、析出量ではありません。必ず高温側との差を取ります。
- 水の質量と溶液の質量を混同する:問題文の200gが「水」なのか「溶液全体」なのかで式が変わります。図や表に「溶質・水・溶液」を書き分けると安全です。
- 水和物(CuSO₄・5H₂O など)に同じ式を使う:水和物の結晶は水を連れて出るため、残りの水の量が減ります。無水物と同じ引き算は使えません。
- 低温の溶解度が高温以上なのに析出を考える:冷却で溶解度が下がらない場合、析出量は0 gです。
- 途中で丸めてしまう:丸めは最後に1回だけ行います。結果の桁数は問題の指示や有効数字に合わせます(桁数の確認は有効数字の計算ツールが便利です)。
ツールで検算する
手計算の答え合わせには、Tools Hubの溶解度・再結晶ツールが使えます。上と同じ硝酸カリウムの例で操作を確認します。
「冷却で析出」を選ぶ
溶解度・再結晶の計算ツールを開き、計算の種類で「冷却で析出」を選びます。
溶解度と量を入力する
高温の溶解度 S₁ に109、低温の溶解度 S₂ に32を入れます。次に「何の量を使うか」で「飽和溶液の量から」を選び、飽和溶液の量 M に200を入力します。
途中式と結果を確認する
「計算する」を押すと「析出量 = 73.6842 g」と表示され、計算の過程に「溶質 = 200 × 109 ÷ 209 = 104.306 g」「低温で溶ける量 = 30.622 g」「析出量 = 104.306 − 30.622 = 73.6842 g」と比例式での確認が並びます。水の量が与えられている問題では「水の量から」を選んでください。
この記事で紹介したツール
溶解度・再結晶の計算
冷却・蒸発での析出量を、質量保存の途中式つきで計算。ブラウザで完結・無料・登録不要です。
濃度の表し方をモル濃度で扱う問題はモル濃度計算ツールとモル濃度の求め方で確認できます。
まとめ
- 析出量は「高温で溶けていた量 − 冷却後に溶ける量」で求められる
- 比例計算の基準は水100gあたり。溶液の質量からは (100 + S) の比で溶質を先に求める
- 水の量が分かっている冷却では、析出量 = (S₁ − S₂) × W ÷ 100
- 蒸発が加わる場合は、蒸発後の水の量で低温の溶解度を当てはめる
- 水和物の析出は結晶水の分だけ水が減るため、この引き算は使えない
- 途中では丸めず、最後に問題の指示や有効数字へ合わせる
まずは「高温の内訳 → 低温で溶ける量 → 差」の3行を書いてから計算すると、式の選択で迷いません。
よくある質問
析出量は「水の量」と「飽和溶液の量」のどちらから求めますか?
どちらから求めても同じ結果になります。水W gからは (S₁ − S₂) × W ÷ 100、飽和溶液M gからは M × (S₁ − S₂) ÷ (100 + S₁) です。問題文で与えられた方を使うと、途中の比例計算が少なくなります。
水和物の結晶が出る場合も同じ式でよいですか?
同じ式は使えません。水和物は結晶の中に水を取り込むため、析出と同時に残りの水の量が減ります。無水物の収支と水の収支を別々に立てて連立する必要があり、この記事で紹介したツールも無水物が析出する前提です。
蒸発だけ(温度を変えない)場合はどう計算しますか?
「蒸発+冷却」のモードで、高温と低温の溶解度に同じ値を入れてください。蒸発後の水の量で溶解度を当てはめるため、蒸発によって析出する量を求められます。
溶解度の値が資料によって少し違うのはなぜですか?
溶解度は測定値であり、温度の取り方や出典によってわずかに異なります。問題を解くときは、問題文や教科書付属の表・グラフで与えられた値を使ってください。ツールで検算する場合も、同じ値を入力します。